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有名写真家を模写すること

見るのとやるのじゃ大違い

今回は模写についてのお話です。

以前のブログでも書いた通り、有名写真家の模写をすることは自分のオリジナリティを確立するための練習としては、とても有効だと思っています。よく言われるようにゼロからオリジナリティは生まれない、オリジナリティとは従来あるのの組み合わせでしかない、という考え方は写真にとってもあながち間違いではないのではないでしょうか。

 

さて、模写をする際のポイントをいくつかあげてみます。

被写体、作風、機材の選択、ロケ場所、季節・時間帯 など

 

それ以外には、模写する写真家が作品を撮影した時の時代のムード、社会的背景、当時の機材性能なども理解しておく必要があると思います。

どうしても今を基準に考えてしまいがちですが、モノクロフィルムが写真の王道だった時代も長かった訳ですし、もっと遡れば大きな箱のようなカメラを抱えて暗幕をかぶって撮影していた時代もある訳です。

機材の進化したこの時代にわざわざこんな面倒なことをする必要はあるのか?と言われれば正直必要ないのですが、やはり何事も物事の成り立ち・歴史を知っているのと知らないのでは大きな違いが生まれてくると思うのです。そして模写することによってただの知識を自分ごととして体感できる、自分の体験として自分自身のものにできるのだと思います。

私の体験でいうと、自分が頭を悩ませてオリジナルのつもりで自信満々に制作した写真作品が、実はまったく同じような作風で自分よりも10年も前に有名な写真家さんの作品として発表されていた、なんていう経験があります。そう、今となってはほとんどの作風はすでに誰かが制作し発表されているのです。今から遺品を撮影して作品にすれば、その作品には必ず石内都さんが現れてきます。そこで大切なことは、自分の作品と類似した写真家の作品について知っていることと、そのすでに発表された写真と一見似ている自分の作品とのコンセプトの違いをきちんと説明できることだと思います。

説明に厚みを持たせるためにも、模写によって様々な状況を知識ではなく体験していることが役に立つと思うのです。

 

 

これまで私は2名の写真家の模写を試みました。

土門拳と森山大道です。

土門拳の模写は、フィルムカメラで仏像を撮影することを試みました。フィルムの感度が低く、低照度の仏像を映すことの難しさを体感しました。

森山大道はコンデジをもって新宿などの繁華街をスナップしました。最初は一眼デジタルを使用したりしていましたが、カメラが大きくて重くて歩き回るのにとても邪魔でした。

 

私の模写のやり方は2週間なり1カ月なり模写する期間を決めて、その間はその写真家の模写をするというやり方です。決められた条件、制約を受けた条件で撮影し続けることではじめて違いに気づくことができると考えています。

レンズも50ミリなら50ミリを定めた期間の間は使用し続けます。50ミリ以外は使用しません。

 

撮段ですが、一時期はカメラの露出設定もシャッタースピード 1/125 絞りF11 ISO 100 で設定したら1日中設定を変更しないで撮影するということもやってみました。これを続けていると面白いことに露出計なしでもその時の天候で適正露出がわかってくるようになります。昭和の時代にカメラをやっていた人なら当たり前のことかもしれませんが、デジタルから写真を始めた人には、何それ?っていう感じかもしれませんね。かく言う私もその口でしたので、後追いでマニュアル露出を練習してきました。適正露出がわかって初めてオーバーでもアンダーでも自分でコントロールして撮れるようになるのですね。

 

ちょっと話はそれましたが、露出もカメラ任せにせず自分の感覚で決めていくという面倒なことを試みるのは、やはりオリジナリティを確立するための練習になると思うのです。

何事にも通じることだと思いますが、結局地味なことを積み上げて一見遠回りになりそうに思えることを続けるのが、結局早道になるように思います。

 

話を模写に戻しますと、最近やっている森山大道の模写ではコンデジの重要性に気づかされます。

コンデジは一眼ミラーレスなどのフルサイズのカメラに劣っているように感じますが、いえいえ、コンデジが最強というシチュエーションがあるのです。コンデジの良い所はまず軽いこと。ポケットに入れておくこともでき、機動力も抜群です。そしてレスポンスが早い。電源を入れて撮影まで2・3秒で撮影することができます。

あとコンデジの素晴らしいところは、コンデジのオモチャ感が周りの人を警戒させないところです。

ぐんぐん歩いて、サッと出して、パッと撮る。

これができるはコンデジならでは。森山さんの模写を通して街のストリートスナップにはとにかくコンデジが最強だと感じました。

(作風によって十分な解像度が必要な時には状況は変わるかもしれませんが)

森山さんの模写をするまでは、正直コンデジなんて・・・と思っていたところがあるので、森山さんの模写を通してコンデジも使い方次第と再認識できたのは良かったと思っています。

 

そろそろまとめましょう。

今後は川内倫子、奥山由之  さんなどの写真家を模写したいなと思っています。

その時に重要だなと思うのが、模写する写真家さんと同じカメラ、もしくは類似するカメラを使用することです。何度もブログで書いていますがカメラは所詮機材にすぎない訳で、大事なのは写真そのもの、という考えには変わりはないのですが確固たるオリジナリティを確立するまでは、いろいろな経験を積むこと、自分事として体験することが大切でカメラの形状やフォーマットの違いによって映し出されるイメージがどうかわるのかを知っておくことも重要だと思うのです。

 

模写をすることによって、写真の歴史を知識としてではなく自分事として体感することができる。

 

だから写真の筋トレとして模写をしよう!というのが今回のまとめです。

 

 

一通り模写を終えたら、次の撮影トレーニングはこんなことを考えています。

 

設定条件

同じ場所を日時とカメラを変えて撮影する(1日に持ち出せるカメラは1台だけ)

私はフィルムも含めカメラをたくさん所有しているので、カメラによってどんな違いが生まれるのか体感して記憶しておきたいと思いました。それはフォーマットの差異による写真イメージの違いだけでなく、カメラによって感じる気分だったり、不便さだったり、もろもろ含めての違いを体感したい。そうすることで作風によって最適なカメラを瞬時に選択できるようになるのではないか?そんなことを考えています。

いろいろやりたいことが出てきて時間がいくらあっても足りません。